珈琲豆「ICBM」の二段焼き焙煎の狙いと技法

珈琲豆「ICBM」は、焙煎過程で火力調整を一切しない「一本焼き」を封じて、途中で一度だけ火力を抑えた「二段焼き」です。1ハゼを過ぎて2ハゼの手前、豆自体の発熱反応で豆温度が再び急上昇を始めるポイントで火力を落としています。

「一本焼き」の場合は、豆温度が急上昇を始めてもそのまま狙った焙煎度合までほったらかしです。雑な喩えでいえば、クルマをある一定のアクセルの踏み込みで走らせていて、急に道路の下り勾配が大きくなっても、そのまま進むようなものです。当然、クルマの速度は上がります。

今般の「二段焼き」の場合は、同じくクルマの走行による雑な喩えでいえば、道路の下り勾配が急に大きくなる地点で、アクセルの踏み込みを弱くして進むようなものです。狙いとしては、クルマの速度を勾配が変わる前と同じに維持しよう、ということです。

この時、アクセルの踏み込みが(弱めたつもりでも)まだ強すぎれば、クルマの速度は上がってしまいます(図のⓐ)。 アクセルを抜きすぎると、クルマの速度は前より下がってしまいます(図のⓑ)。 アクセルの調整が遅すぎれば、急な下り勾配で速度が上がってしまってから、慌ててアクセルやブレーキを調整することになります(図のⓒ)。 まだ急な下り勾配に差し掛かる手前からアクセルの踏み込みを弱くしてしまうと、その瞬間からクルマの速度は落ちてしまいます(図のⓓ)。

さて、温度計もない手廻し釜で、どうやって勾配の変化、つまり豆温度が再び急上昇を始めるポイントを探るのか? パチパチ音がしていた1ハゼが終わって、ピチッっと2ハゼが始まる前の間に、豆の擦れ音が僅かに変わるポイントがあります。場合によっては、ごく微かに「チッ」とか「チリッ」とかいう音がします。手に伝わる釜の回転の抵抗にも僅かな変化があります。その時です! その瞬間を豆温度が再び急上昇を始めるポイントとして捉えています。

一段階目の火力調整と同様に、二段階目の火力を絞りすぎてもダメ、絞らなさすぎてもダメ、遅すぎてもダメ、早すぎてもダメ…「二段焼き」は「一本焼き」の調整を2回やるようなもので、抑える度合とタイミングを身構える緊張でクタクタになります(笑)。でも、ハマれば「一本焼き」とは異なる味わいが得られるのです。