星ねずみはオリンピックの夢を見るか?

星ねずみの話をしましょう。小説家フレドリック・ブラウン(1906-1972)による‘星ねずみ’(Star Mouse)の話は、正続2つの短篇があります。私の手元に長らくある星ねずみは、正篇がサンリオSF文庫の『フレドリック・ブラウン傑作集』(1982)に収載されたもの、続篇がソノラマ文庫海外シリーズの『機械仕掛けの神』(1984)に採録されたものです。

 

この正篇「星ねずみ」(原題 The Star Mouse:1942)は星新一が日本語訳にしたもので、他の訳者版に比べて名訳とも思えませんが、「星」新一によるので正真(?)の「星」ねずみであるところが気に入ってます。収載する文庫本のカバーには、和田誠による星ねずみのイラストが描かれていて、これまた好いです。

 

また続篇「星ねずみの冒険」(原題 Mitkey Rides Again:1950)は仁賀克維が日本語訳にしたもので、正篇と比べるとブラウンの名作とも思えませんが、《単行本未収録の短編》として紹介されているのが泣けるところです。採録された文庫本にはカバーと同じ勝川克志による星ねずみのイラストが話扉に描かれていて、これまた好いです。

 

いずれの日本語訳も所収された文庫本が発売された時に読んだわけですが、サンリオSFもソノラマ海外もとっくに終刊して今となっては何もかも懐かしい昔話になってしまいました。

 

さて、子(ね)年の2020年はオリンピックイヤーなどと巷間で騒ぎ立てていますので、話変わって日本におけるリアルなネズミの話をしましょう。ネズミの専門家である矢部辰男によれば…

 

《では2020年の子年はどうなるであろう。私はクマネズミによる「第3段階」の宣伝場になると予想する。1960年代までは都市化とともにドブネズミが都心で優勢化した。ネズミ社会から見て、私はこれを都市化の第1段階と呼ぶ。第2段階はビル街にクマネズミが復活した1970年代から始まる。そして第3段階はビル街だけでなく、都心の住宅街でもクマネズミが横行するようになった1990年代半ばから始まる。これはとくに東京23区で目立つ。その状況は高齢者世帯の増加とともにますます広がりつつある。都心に散在する空き家もネズミ、とくにクマネズミの発生源になるはずだ。ネズミたちは空き家をねぐらにして周辺に食べ物を求めて生活する。》(コラム「子年とオリンピックとネズミ社会の第3段階」

 

…とされます。2020年の首都圏では、コーヒーの第3波(サードウェイヴ)とか言われている店が次々に潰れていくと私は予想していますが、ネズミの第3波(サードウェイヴ)は隆盛するようです。ネズミ第1波だった56年前の東京オリンピックでは、その招致を機に東京都殺虫消毒同業協会が結成されてネズミの駆除にも躍起になったようですが、今般の東京オリンピックでも第3波のネズミに大わらわとなるのでしょうか? 市街のクマネズミやドブネズミは、あるいは野原のハツカネズミやカヤネズミは、オリンピックの夢を見るのでしょうか? そして、星ねずみもまた、オリンピックの夢を見るのでしょうか? 皆さまも、星ねずみの話と珈琲「星ねずみ Mitkey」を味わって考えてみてください。よろしくどうぞ。

 

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